2018年8月23日木曜日

鷲田清一「折々のことば」1203を読んで

2018年8月20日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1203では
「天文民俗学」の研究者北尾浩一の『日本の星名辞典』から、次のことばが取り上げ
られています。

  時計と違って止まることのない星が暮らしの
  なかにあった。

「天文民俗学」という学問の分野があることは、知りませんでした。しかし、このことば
を聞くと、星空自体が私たち都会暮らしの人間には、ますます縁遠くなって来ている
ことに、改めて気づかされます。

まず、私の家から見る夜空でも、特別に明るい星以外はほとんど確認できませんし、
月が輝く周辺以外は、空がほの暗い闇に包まれていて、妙に平板に見えます。

ですからたまに、信州の高原などに行って満天の星空を目にすると、息をのむほど
感動します。本来私たち人間は、このような夜空に抱かれて毎夜を過ごしていたの
だと考えると、現代の都会人は何か大切なものを喪失した状態で、日々を過ごして
いるようにも、感じられます。

でも上記のことばは、星空の効用は単に情緒的なものだけではないことを示して
います。星の運行はかつて人々に時の流れを告げ、また航海者は星の位置から
進むべき方角を特定したといいます。

人間は自然から自らを遠ざけて行くに連れて、その恵みを享受する心をも、さび付か
せて行っているのかも、知れません。

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