2016年1月25日月曜日

京都国立博物館 平成知新館「琳派京を彩る展」を観て

琳派誕生400年記念に相応しい、国宝、重要文化財目白押しの、何とも贅沢な
展覧会でした。

大別すると、本阿弥光悦、俵屋宗達の琳派第一期、尾形光琳中心の第二期、
酒井抱一を筆頭とする第三期と、時系列に沿った展観となっていますが、
周知の通りそれぞれ17世紀、18世紀、19世紀と100年余りの時を隔てて、
文字通り琳派のエポックが出現していることになります。

まず琳派400年の根拠ともなる光悦が洛北鷹ヶ峰に徳川家康より所領を得て、
工芸村を作った頃の展示を観ると、彼が刀剣の鑑定、研磨を本業とし、職人
とのやり取りなどそのノウハウを活かして、次第に諸工芸の分野に活動の幅を
広げて行った様子が見て取れます。特に光悦の黒楽、赤楽茶碗は、400年近い
時を経ても無論決して古びることもなく、深い精神性と先鋭的な美意識を感じ
させ、彼の天賦の才を彷彿とさせます。

その光悦がもう一人の天才宗達と出合って、琳派は一気に花開きます。宗達は
扇子屋として出発したということですが、彼の生まれつきの画才と、扇面に
構図を付けることによって研かれた優れたデザイン感覚によって、琳派様式の
芸術を完成させます。

光悦、宗達の合作で目を引いたのは、重文「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」で、
宗達が料紙に群れ飛び、佇む多数の鶴を金銀泥で描いた上に、光悦が三十六
歌仙の歌を墨書しています。その洗練された優美さは、一つの到達点として
他の追随を許さないものがあります。

光琳の出自は高級呉服屋で、職業柄も当時の文芸の粋を身に付けたといい
ます。彼の活躍した時代の社会情勢、彼自身の好みもあってか、光琳の生み
出した絵画は、宗達と比較して優雅さ、きらびやかさを増したように感じられます。
光琳と弟の陶芸家乾山との合作の器にも、光悦と比べて雅た佇まいが宿ります。

抱一に至ると活動の主舞台が江戸ということもあってか、その洒脱さが印象に
残りました。彼と蒔絵師原羊遊斎合作の工芸品には、匂い立つ江戸の粋が感じ
られました。

さて本日の目当ての宗達、光琳、抱一、三組揃った風神雷神図屏風。三組が描か
れた時期の時の隔たりもあり、模写というかたちで継承されて行ったという条件も
ありますが、私には宗達作がより重厚で神秘的、光琳作はおどろおどろしくインパクト
があり、抱一作にパッと明るい軽みが感じられました。

観終えて満足と充実感と共に、軽い疲労も感じる、盛り沢山の展観でした。

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