2016年1月20日水曜日

京都市美術館「フェルメールとレンブラント 世界劇場の女性展」を観て

メトロポリタン美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、アムステルダム
国立美術館のコレクションを中心に、黄金時代といわれる17世紀オランダ絵画を
展観する美術展です。女性を描いた絵画に脚光を当てる展覧会でもあります。

今年は京都では琳派400年ということで、美術展を始め様々な催しが行われて
いますが、くしくもオランダ絵画の黄金期と重なり、洋の東西二つの地点で、
同時期に芸術が花開いたということに何か奇縁を感じます。フェルメールを中心に、
今年当地でこの時代のオランダ絵画展がいくつか開かれているのも、その関連に
よるのでしょう。

さて本展では、フェルメール「水差しを持つ女」とレンブラント「ベローナ」が中心の
作品とされていますが、さすが黄金期の絵画とあって他の作品にも見ごたえの
あるものが多くありました。

まず日頃見慣れぬ絵画として、Ⅱー3建築画家のパートに展示されていた
ピエール・サーンレダムの2作品、この画家は実寸を縮尺して正確に再現した
建造物を描くといいますが、そのような描写方法でありながら画面に美しい
余韻と詩情を醸し、一見生硬に感じられるものが実は理知的な輝きを演出して
います。

Ⅱー4海洋画家たちのパートのファン・ヴィーリンゲン「港町の近くにて」も、停泊する
帆船の姿が機能的でなおかつ美しく、海洋国家オランダの時代の息吹、船という
乗り物がまだ強く抒情性を体現した頃を思い出させてくれます。

今や西洋絵画の代表的ジャンルの一つとなった静物画を展示する、Ⅱー5
静物画家たちのパートでは、果物や食材、食器をいかに美しく存在感があるように
描くかということに情熱が注がれ、時代の栄華が透けて見えます。

フェルメールの「水差しを持つ女」は、独特の光の表現法による時の流れを一瞬の
中に閉じ込めたような画面が、他の追随を許さない光輝を発散させていますが、
決して声高に主張することはありません。

レンブラントでは「ベローナ」の気品ある存在感よりも、彼に帰属する「マルハレータ・
デ・ヘールの肖像」に今日は心惹かれました。この作品は恐らく初老の女性の
肖像画で、荒いタッチで素早く描かれていますが、後期の彼の作品特有の人生の
苦渋を知り尽くした諦観に充ち、内省的な表情に思わず惹き込まれます。

最後の展示作品アルノルト・ハウブフーケン「イビネイアの犠牲」の説明書きで、この
オランダ絵画の黄金時代の終焉が提示された時、それまでの展観が充実していた
だけに、何とも言えぬ寂しさが込み上げて来ました。

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