2015年6月26日金曜日

母と暮らして

職住一体で、典型的な家族経営の小規模な店を営んでいる私たちは、
今も年老いた母と一緒に暮らしながら、日々の仕事を行っています。

母は父と力を合わせて長年この店を切り盛りしながら、私たち子供を育て、
養ってくれました。子供の側の立場からすれば、常に商売というものが
前提にあって、母にあまりかまってもらえなかったり、保護者参観などの
学校の行事にも滅多に出席してもらえなくて、さみしい思いをしたことも
多々ありましたが、私自身店に携わるようになって年月を経た今となっては、
親たちの商売への取り組みの真摯さが伝わって来るようにも感じます。

四年前に父が亡くなり、母は何か大きな荷を下ろしたように、次第に直接
仕事に関わることからも遠ざかり、店の諸々を気に掛けながらも、自分の
身の回りの世話を中心に時を過ごして来ましたが、近年は老いも目立ち
始め、昨秋脳梗塞を起こして約四か月間入院生活を送ってからは、膝が
不自由になって自宅で入浴が出来ず、入浴介護が実施されるデイケア
センターに通いながら、自宅兼仕事場で日々を過ごしています。

自宅にいる時は、私たちが働いているのを間近に見ていることで気持ちが
落ち着くらしく、店の奥まった片隅の指定席の椅子に座って、何やら自分の
こまごまとしたことをやっています。

最近は記憶も覚束なくなって来て、一緒にいると日々の飲み薬の管理や、
忘れ物探し、あるいは、急にとんちんかんな事を言ったり、行動をしたり、
驚くやら、はらはらさせられるやら、煩わしいことも随分と有りますが、
何かの拍子にふと、心を和ませてくれる瞬間も有ります。

それは母が美味しいものを食べた時の、欲得のない嬉しそうな顔であったり、
あるいは、私たちが仕事上のことで喧々諤々と議論し合っている時の、的は
外れているが、ついつい笑みがこぼれてしまう、母のアドバイスであったり
します。

そんな時、老人と一緒に暮らすことには、こんな美点もあるのだと、何だか
ホットさせられます。






0 件のコメント:

コメントを投稿