2020年10月31日土曜日

鷲田清一「折々のことば」1969を読んで

2020年10月20日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1969では 石井あらたの『「山奥ニート」やってます。』から、過疎の山村に私費を投じて障害者支援施設を 設立した、元養護学校教諭・山本さんの次のことばが取り上げられています。    靴に足を合わせるんじゃなく、足に靴を合わ    せなきゃいけない。 この言葉は、今日の社会の息苦しさの原因の一つを、端的に言い表していると感じます。 私たちの暮らしが物質的に豊かになり、国の格付けとしてもいわゆる先進国の一つと見なされるように なるにつれて、私たちは、社会的規範に従うことも求められるようになってきましたが、それは意義の あることとしても、今度は逆にまず規範ありきで、私たち自身がそれに縛られていると感じられるよう になったと、私は思います。 その結果、こうでなければならない、このようにふるまわれなければならない、という規範が先行して、 私たちはそれに合わせるために、きゅうきゅうとしているように感じられます。これがこの社会の息苦 しさの要因の一つではないでしょうか? あるいは、社会が成熟して流動性が失われ、人生の過程の一つのところで失敗をすると、もう取り返し が着かないとというような危機感も、このような人の生活を形にはめる社会の在り方と、無縁でない ような気がします。 そのような社会の空気の中で、そこから一歩踏み出すことは、とても勇気のいることではありますが、 でもある意味、このような規範に従うことは、私たち自らが、自分自身をその枠にはめていることでも あると、思われます。 この境界を踏み越える気概を得るために、私も日夜、研鑽を積んで行きたい、と思います。

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