2020年10月9日金曜日

朝日新聞「日曜に想う 抗議のマスクと一編の詩」を読んで

2020年9月27日付け朝日新聞朝刊「日曜に想う」では、編集委員福島申二による「抗議のマスクと一編の詩」と 題したコラムが、掲載されています。 これは先日開催されたテニス全米オープンで、大阪なおみ選手が、米国内で警察官などの暴力によって命を 失った、黒人被害者の名前をそれぞれに記した、初戦から決勝戦までの7枚の黒いマスクを用意し、それらを 全て着用して見事に優勝を飾った快挙にちなみ、川崎洋、スーザン・ソンダグ、石川逸子、チャプリンの詩や 著書、映画の中の言葉を絡めて、反差別や人間の尊厳について考察する文章です。 この中で特に私の印象に残ったのは、大阪選手がそれぞれの犠牲者の名前を記したマスクを試合会場で着用し ながら、反差別を声高に主張するのではなく、彼女の姿を観た観衆が各々にその意味を考えてほしいという スタンスで臨んだことで、この抗議の姿勢こそ、観衆にこれらの暴力事件の意味を自らに引き付けて考えること を促し、事態の深刻さを我がこととして省みる契機を与えた、と思われるからです。 今回の黒人に対する一連の暴力事件の抗議活動が、一部で先鋭化、暴徒化して、暴力が暴力を生む事態になって いることを鑑みても、大阪選手の1人1人の犠牲者の名前を挙げた、反差別、反暴力のこの抗議活動は、良識ある 人々の共感を呼ぶものであると、感じました。 同時に日本国民でもある大阪選手が、私たち日本人に米国での黒人差別を、対岸の出来事と他人事に見るのでは なく、だれも目を逸らすことの出来ない普遍的な人権問題として、考える機会を与えてくれたのではないかとも、 感じました。

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