2019年6月17日月曜日

美術館「えき」KYOTO 「安珠写真展 Invisible Kyoto」を観て

JR京都伊勢丹の美術館「えき」で、国際的モデルから写真家に転身した安珠
(あんじゅ)の写真展「Invisible Kyoto ー目に見えぬ平安京ー」を観ました。


私は一般に写真作品というと、カメラマンの視点を通して被写体をリアルに捉えた
作品が好きなので、本展に並べられた写真を目にして最初は少し戸惑いました。

というのは、「目に見えない平安京」というテーマ設定が示すように、この写真家
は現在の京都の風景、事物を対象にしながら、そこからかつての平安京の気配
を浮かび上がらせようと意図していることが、感じられるからです。

それ故にそこに展示される写真作品は、単に現実をありのままに捉えるのでは
なく、一種スピリチュアルな写真とでもいうように、対象を直感的に切り取り、ある
いは写真の上に人工的な加工を施して、美しく、しかし幻想的な世界を現出して
います。

また写真に添えられた詞書きも、その独自の世界観を表現するために重要な
役割を担い、鑑賞者は写真と詞書きを交互に観ることによって、その独特の
世界に入り込んで行くことになります。いわば、写真と文芸をミックスさせたよう
な展覧会であると、感じました。

そういう訳で私は、当初この作品世界をどう解釈すればいいのか戸惑いました
が、上記のような周到な仕掛けもあって、次第にその夢とも現ともつかぬ世界に
浸されて行くように感じました。そして最後の平安時代のイメージのエッセンスを、
演じ手の男女の所作、ダンスによって表現した抽象的な映像作品によって、
その想いは強く印象付けられました。

この展覧会にために制作された、細野晴臣の音楽もいやがうえにも気分を盛り
上げ、通常の写真展とは一味違う雰囲気を味わうことが出来ました。


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