2019年6月10日月曜日

田中亮監督映画「コンフィデンスマンJPーロマンス編ー」を観て

昨年フジテレビ系で放映された連続ドラマ「コンフィデンスマンJP」がすっかり気に
入ってしまい、今年公開されたこのドラマの映画版を観に行きました。

このドラマは、ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)
の詐欺師3人組が、権力、財力、名声を盾にして世にはびこる悪人から、手の込んだ、
鮮やかな詐欺の手口で大金をだまし取るストーリーで、古沢良太脚本、かのジョージ・
ロイ・ヒル監督映画で、第46回アカデミー賞作品賞受賞作、信用詐欺映画の名作
「スティング」を彷彿とさせる、詐欺の相手ばかりか観客をも欺く、しかし欺かれた観客
も観終わって晴れ晴れとした気分を味わえる、秀逸な作品です。

さて映画はドラマよりさらにスケールアップ、舞台は香港で、この街の闇の実力者、
氷の女帝ラン・リウから時価400億円といわれる宝石の詐取をもくろみます。しかし
勿論、これ以上種を明かすのは野暮というもので、後は観てのお楽しみです。

とはいえ全体の印象から語ると、詐欺の手口はますます手が込み、一体誰が騙して、
誰が騙されているのか、最後の最後になるまでわかりません。その中で、フェイクか
フェイクでないかに関わらず、ロマンスあり、ハラハラドキドキさせられるところあり、
おまけにニヤッとさせられるところもあって、脚本が相変わらず冴えていると感じ
ました。特に名作映画のパロディーが、ところどころに顔をのぞかせるところが、ほど
良いユーモアのスパイスになっています。

そして忘れてはならないのが俳優陣の熱演、ともすれば信ぴょう性を疑われる物語を
つゆともそのように感じさせず、自然体でリアリティーを伴って演じることは、なかなか
難しいのではないかと、思いました。

最後に、このような物語が今ヒットするのは、現代を生きる人々が、生きているという
実感を得られにくくなって来ていることの裏返しではないか、あるいは現実に社会的に
弱い立場の人が詐欺の被害に会う殺伐とした社会で、卑劣さの対極としての義賊的
な詐欺行為に微かな救いを見出すからではないか、と感じました。

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