2018年4月18日水曜日

美術館「えき」KYOTO 「蜷川実花 UTAGE」を観て

「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2018」がいよいよ始まり、早速アソシエイテッド・
プログラムの「蜷川実花UTAGE」を観に行きました。

この展覧会は、国際的に活躍する女性写真家蜷川実花が、京都の五花街の舞妓、
芸妓をモデルに、京都の伝統と美を切り取ろうとする写真展で、彼女らしく豪華な
セットを組み、極彩色の背景の中に、艶やかな花街の女性たちを浮かび上がらせて
います。

会場に入ってまず驚かされるのは、展示壁面に至るまで蜷川の写真を刷り込んだ
装飾で埋め尽くされ、あたかも会場全体が一つのセットのような趣きを呈することで、
その中にそれぞれきらびやかな伝統衣装に身を包み、化粧を凝らしてポーズを取る
舞妓、芸妓たちの美しい写真作品が並べられて、その空間に一歩足を踏み入れる
だけで、観客は陶酔感とでも言っていいような夢見心地の気分に誘われます。

しかし少し浮ついた気持ちで一つ一つの作品を観て行くと、趣向を巡らせ原色の
発散する背景を背にしても、そこに写る舞妓、芸妓たちの存在感がなお一層色あせ
ないことに突如として気づかされて、はっとします。

彼女たちの可憐さ、艶やかさ、色っぽさ、しかしそこはかとなく漂う寂しさ、はかなさが、
静かに浮かび上がって来るのを感じました。そしてけばけばしく人工的なセットが、
花街の女性が本来まとうそこはかとない情緒をあぶり出すことに、新鮮な驚きを覚え
ました。

とはいえ同時に、今日の社会において、最早舞妓、芸妓というものが、本来とは違う
イメージ、役割を担わざるを得なくなっていることを、これらの写真は図らずも提示
しているとも、感じました。

伝統文化の中の変わらないもの、変わりゆくもの、そのようなことについて考えさせ
られる展覧会でした。

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