2018年4月25日水曜日

京都新聞ビル印刷工場跡「ローレン・グリーンフィールド GENERATION WEALTH」を観て

今回は「京都国際写真祭2018」の催しの中から、京都新聞ビル印刷工場跡(B1F)の
「ローレン・グリーンフィールド GENERATION WEALTH」を観て来ました。

まず、京都新聞ビルは私の住まいのすぐ近くで、いつも前を通っているのですが、
その地下に印刷工場があったなんて全く知りませんでした。この度初めて地下に
下りて、その空間が醸し出す独特の雰囲気に魅力を感じました。

印刷工場跡は、地階いっぱいに広がる大きなスペースで、印刷機械は既に撤去
されていますが、かつてそこがどのような用途で使われていたかがすぐに想像される
ような、壁面は黒ずみ、インクの臭いが染みついて、装飾的なものは一切なく、しかし
廃墟というにはまだ、人々がそこで労働した温もりが微かに残っている、都市的で
ありながら、ノスタルジーを誘う場所でした。

さてグリーンフィールドは、アメリカに象徴される高度な消費文明の中で、富や名声に
翻弄される人々を写真や映像作品として提示することによって、社会の実相を明らか
にしようとする作家で、今展でも「GENERATION WEALTH」と題して、欲望にまみれた
人々の生態や愚行を赤裸々に活写しています。

展示方法も、上記工場跡の広い空間の中央部分を縦に貫くように並べられた、透明の
壁面に設置された大きな写真作品が、背後からの照明によってほの暗い空間の中から
次から次へと浮かび上がるような演出がなされていて、鑑賞者は作品を観ながら
知らず知らずの内に、彼女独自の作品世界に迷い込んでしまいそうな感覚に囚われ
ます。

この展覧会が語り掛けて来るものは余りにも多岐にわたり、一言で感想を言い表す
ことは出来ませんが、本来人間を豊かにすることが目的であったはずの資本主義が、
経済成長というその手段を振りかざして、人々を欲望の虜にし、結果として社会や一人
一人の心を阻害している姿が、端的に表現されていると感じました。

お前たちそろそろ目覚めよ!と、本展は語り掛けて来ると、感じました。

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