2014年2月27日木曜日

岩城けい著「さよなら、オレンジ」を読んで

本屋大賞にもノミネートされている、話題の本です。

言語というものが人間にとって、どのような社会的意味を持つのか?
本書は、アフリカから難民としてオーストラリアに移住し、その地の
言語を学ぶことによって、生きる意味を見出して行く女性を主人公
として、人間にとって言語とは何かという命題を、見事に描き出して
いる小説です。

彼女は英語を習得するにつれて、子供との絆を深め、職場で自分の
立場を揺るぎないものとし、語学学校で掛け替えのない友人たちを
作ることが出来るようになります。

正に言語が、社会の中で彼女の立つ位置を明確にし、生きる希望と
自信を与えるのです。それこそが、社会性という部分における、言語の
効用に他ならないでしょう。

小説全体を見ても、物語と手紙文を交互に並べる体裁をとりながら、
最後に実は、入れ子式の構造であることを読者に気付かせる、心憎い
演出が、言語というものの機能を暗示しているのかもしれません。

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