2026年7月22日水曜日
打越正行著「ヤンキーと地元 解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち」を読んで
岸正彦著「生活史の方法」に触発されて、初めて読んだ生活史調査の書です。本書は、沖縄の社会の周縁部に生きる
若者の生活史の記録ですが、打越は、沖縄の暴走族の少年集団のパシリ(使い走り)となって親密な関係を築き、彼
らの生活に密着して以降の人生を追います。その結果、彼らの肉声に届く希有の調査記録が生まれたと感じます。
普通彼らの生態を描く書があったとしても、書き手が一定の距離を置いた所からのぞき込むように記述しているのが
一般的で、外面をなぞるだけで、彼らの生活の内情に十分に肉薄しきれていないのが多いと推察されます。ところが
本書では、文字通り著者が彼らの仲間内になって、一緒の生活を体験することによって、彼らと喜怒哀楽を共にし、
当事者に寄り添うようにして記述されています。
そこで明らかになるのは、貧困や劣悪な家庭環境から彼らが学習意欲や学校での居場所を失い、暴走行為で一瞬の
快楽を得るために仲間で集まってグループを結成し、グループ卒業後は解体屋など、肉体的に厳しい建設業に従事
するか、風俗経営者など違法すれすれの職業に就いて、生計を立てるということです。
生活条件が厳しいだけに、彼らの生は刹那的であり、暴飲、ギャンブル、薬物、金銭、女性トラブル、ヤクザとの
いざこざ等、彼らが身を持ち崩す危険はそこここに散見されます。また彼らの仲間の女性は、主に風俗店で働き、
一緒になった男によって搾取されたり、薬漬けにされたりの危険と隣り合わせで生きています。
このように私たち外部の者から見ると、彼らの生活は恵まれないものであるように思われますが、打越の目を通して
見ると、彼らは地元に護られて先輩後輩のしっかりとした秩序の中に生き、危ないながらも子供を中心として、幸せ
な家庭を築こうと奮闘しているように思われます。特に女性たちは、子供が生まれると、きっちりとした生活設計を
立てようとするところが健気でした。
本書の若者たちの生態から明らかになるのは、本土の発展から取り残された沖縄の旧弊、本土から受ける差別の実態
などであるでしょう。特に私たち本土の人間が知ろうとしなかった、沖縄社会の実際を目の当たりにすることが出来
たことは、大変有意義なことであると思いました。
本書を著した、暴走族の若者と親しくなれる希有の社会学研究者打越正行は、若くし2024年に亡くなったと言います。
大変残念です。
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