2026年6月3日水曜日

「鷲田清一折々のことば」3568を読んで

2026年2月2日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」3568では 作家堀江敏幸の随想集『音の糸』から、次の言葉が取り上げられています。    相手を立てるだけではない形で厳しく仕    事に向き合い、結果として他者への気遣    いに満ちた音を生み出す。 生涯に渡り歌手の伴奏に徹したピアニストが、最後に一度シューベルトの曲をアレンジしたⅠ分 35秒の演奏を披露したのですが、その演奏は、「角がまったくない、すべてを包み込むやさしい 情熱に満ちた音」を響かせたそうです。 筆者は、その音に自分の言葉もいつか近づけたら、と思ったようですが、伴奏者も一流の人は、 歌手を立てながらもそれだけでは終わらず、歌い手と一体になって、音楽を完成させるのだと感 じます。 私は音楽には詳しくありませんが、例えば能楽なら、シテ(演者)が舞う時に伴奏の役割を果た す地謡の担い手の人々は、鼓、笛などの楽器と一体となって、シテと呼吸を合わせながら、一つ の曲を作り上げます。その場合、シテの技量は言うに及ばず、地謡、楽器の巧拙もその曲の出来 映えを決定します。 それと同じように音楽においても、優れた伴奏者は、ソロでも表現出来る技巧を持ち合わせて いるということなのでしょう。控えめな中に、優れたものを潜めている人は、私にとっても魅力 的です。