2026年6月25日木曜日

渡邊雅子著「論理的思考とは何か」を読んで

物事の論理を考える時、論理的思考法は大変重要であると考えます。しかし反面、論理的な考え方一辺倒 では、温かみがないように感じます。論理的思考という言葉はいつも念頭にありますが、さてどういう 思考法かと問われると具体像が浮かばないので、本書を手に取りました。 本書は、難しい概念を簡潔に整理して描いていると思います。それ故私のような専門知識の乏しい人間に も、概要は理解出来ました。 最初に置かれた西洋の思考パターンを考察する序章では、哲学の論理と思考法という部分に、大いに興味 をそそられました。無論私がこういう思考方法に無知ということなのですが、例えば、「愛」「死」など 漠然とした大きな命題に対して、一つの対話を通して思考を組み立てていく論法は、想像力に富みスリリ ングで、自分が経験したことがないだけに、一度試してみたいとかんじました。 著者が序章にこのような項目を選択したことからも分かるように、論理的思考法という言葉は西洋由来で ある故に、私たちは、合理的にものを考える方法は何でも、西洋的に習うべきであると思いがちですが、 本書の第一章以降では、順序立てて「経済」「政治」「法技術」「社会」という、それぞれの領域に適合 した論理的思考法を、なぜそれが相応しいかも含め、紹介しています。 私なりに大約しますと、経済の論理では、アメリカの作文エッセイに見られる効率性重視と確実な目的の 達成のために、まず最初に主張を置き、事実としての根拠を示し、結論では主張を繰り返す。政治の論理 では、フランスの作文ディセルタシオンに見られるように、矛盾の解決と公共の福祉を重視して、主題に 関わる全体構成の提示から始まり、弁証法を用い全体の議論をまとめ、次の問いへと導く方法で終わる。 法技術の論理では、イランの作文エンシャーに見られるように、真理の保持を絶対的な命題として、主題 の背景を語ることから始まり、主題の説明へと進み、諺、詩の一節、神への感謝のいずれかで結ぶ。社会 の論理では、日本の感想文に見られるように、書き手と読み手の共感の醸成を重視して、書く対象の背景 から始まり、書き手の体験を述べ、体験後の感想を記するというものです。 それぞれの領域に相応しい思考法が、それに基づく教育を重視する各国の作文の形式に示されることは 率直な驚きであり、それぞれの国が養成する思考法の形式が、國の世論や政策、行動様式にも強い影響を 及ぼしているであろうことを知り、思考法というものの奥深さを感じました。

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