2021年1月26日火曜日

アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」を読んで

スウェーデン人精神科医による、スマートホンがいかに人間の脳に悪影響を及ぼすかを解説 した書です。 考えてみれば、十数年の前には、世間にスマホがこれほど普及するとは思いもよらず、まして や、自分自身が肌身離さず携帯しているなど、夢にも考えませんでした。 しかし使い始めてみると、その利便性は画期的で、知らず知らずのうちにその機能にすっかり 依存して、今では無くてはならないものになっています。 だがそれゆえに、便利なものにはそれに見合う弊害があり得るという疑念に、薄々気づきなが らも、現実の効能に頼り切って、そんな疑問はすっかりなおざりにして来ました。 さて、そして本書です。著者の主張が分かりやすく私たちの頭に入って来る第一の理由は、 原始時代に遡って人間の脳の発達過程を検証し、その進化の過程で獲得した脳の機能が、現在 最先端のIT技術の粋であるスマホの機能と、いかにして齟齬をきたすかを論理的に語っている からです。 即ち、人間の脳は本来狩猟採集生活に適合するように発達し、その根本構造は現在も変わって いません。しかし現代人の生活は、その頃とすっかり変わってしまい、ただでさえストレスが 溜まりやすいのに、それに輪をかけてスマホの体験を伴わない夥しい情報を垂れ流し、しかも それを視覚に訴えかける刺激的な光で表示する機能は、人間の脳を混乱させます。 ましてや、スマホに付随するSNSの機能は、その商業戦略上も利用者の好奇心や承認願望、自己 顕示欲を間断なく刺激し、その結果依存症や集中力の欠如、情緒不安定、果てはうつ症状を 生み出します。 分かりやすく、説得力がある第二の理由は、上記の説明を裏付ける実際の複数の実験結果が 丁寧に示されていることです。これによって読者は、否応なく厳しい現実に直面させられます。 ともかく、スマホが人間の脳に与える悪影響は自明のことで、特に子供、若い世代は、その 使用に十分留意しなければなりません。 また本書は、スマホの弊害を和らげる具体的な方法にも、言及しています。幼い子供には スマホを持たせない。1日の使用時間に制限をかけて、また心身を健やかに保つために、一定 以上の運動をする。 最後に、人間の脳の進化過程から著者が導き出した、人間は常に不安を抱く生き物であり、 より良く生きるためには心身を健全にして、不安と上手く付き合って行くことが必要である という結論も、納得を持って心に受け止められました。

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