2021年1月22日金曜日

鷲田清一「折々のことば」2055を読んで

2021年1月1日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」2055では 俳優松重豊の随想・短篇小説集『空洞の中身』から、次のことばが取り上げられています。    芝居の最中に台詞が出て来ないという恐怖。    これは役者が死ぬまでうなされ続ける日常的    な悪夢の代表なんじゃないかな。 私は役者ではないので、この恐怖を切実に感じ取ることが出来るとは思えませんが、ただ、 若い頃に能楽の仕舞を稽古していて、時々舞台にも立ったので、ある程度の実感はありま す。素人の私にとっても、舞台で台詞や仕草を忘れたらどうしようというのは、大きな 不安の種だったのです。 でもプロの役者にとっては、真剣に舞台に取り組んでいるゆえの、台詞を失念することの 恐怖なのでしょうから、この緊張感ややり遂げた後の達成感は、より増幅され、それが演者 にとっての舞台の魅力にもつながっているのだと、推測されます。 この言葉を読んで、私たち市井の平凡な人間も、日常の中にその時にしかない瞬間を生き、 それを全力で全うしたいという感覚を持つことが出来れば、更に人生も充実したものになる のではないかと、感じさせられました。

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