2021年1月11日月曜日

ポン・ジュノ監督映画「パラサイト 半地下の家族」テレビ地上波放映を観て

第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初のパルムドール受賞、第92回アカデミー賞で非英語 作品初の作品賞受賞と、世評高いこの映画がテレビ地上波放映されたので、早速観てみ ました。 韓国では都会の貧しい人々の住居を象徴するらしい、ビルの半地下で暮らすキム家の4人 家族が、悪知恵を働かせて、裕福なパク家に家庭教師、運転手、家政婦として次々に入り 込む序盤の展開は、小悪党が金持ちを騙す悪漢物語のようで小気味よく、観る者もキム家 の人々の嘘がばれないかとはらはらしながら、ストーリーをついつい追ってしまいます。 ところが後半、追い出したはずの元家政婦の再訪から、パク家の人々も知らない邸宅の 地下室に、元家政婦の借金取りに追われる夫が隠れ住んでいることが判明してから、物語 は暗転し、キム家の人々も自らの策略のために、過酷な状況に突き落とされることになり ます。 この映画は起承転結のはっきりとした、分かりやすいストーリー展開でありながら、決し て感傷的にはならずに、韓国社会における貧しい人々の悲惨な状況、他方裕福な人々の 贅沢な暮らしや、貧しい人への理解のなさといった社会問題を、ユーモアを織り交ぜて 巧みに描き、それでいて家族の情愛もたっぷりと描き込むなど、脚本の素晴らしさが目に つきました。勿論、一貫して緊張感を失わせない監督の演出の巧みさ、主要俳優陣の演技 のうまさも、特筆に値します。 また、私のような韓国人以外の鑑賞者としては、彼らの民族性やものの考え方、感情の 起伏といったところまで感じさせてくれる、私たちの隣国理解を助けてくれるような、 決して内向きではない、発信力のある優れた映画だと思いました。

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