2020年11月27日金曜日

鷲田清一「折々のことば」1989を読んで

2020年11月10日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1989では 日本美術の研究者でもある、皇族・彬子女王の雑誌「和楽」での連載「イノリノカタチ」から、 次のことばが取り上げられています。    お盆のころに、小さな虫が近くに寄ってき    て、「あ、戻ってきたんだね」と、その虫に亡    くなった人を重ねる人もいらっしゃいます。 私も子供の頃には、お盆には虫取りなどの殺生をしてはいけないと大人に言われて、なるほど と納得しながら、自重したことを覚えています。 それはお盆に亡くなった人が帰って来るから、殺生をしてはいけなかったのか、あるいは、 お盆には全てのものの命を大切にしなければならないから、虫でさえ殺してはいけなかったの か、今ではその理由も定かではありませんが、ただそれが自明のことであるという共通認識が 一般に共有されていたように思います。 そういう共通した認識は、知らず知らずのうちに子供の心にも刷り込まれ、日ごろは表面には 現れなくとも、命や自然に対する漠然とした畏怖のようなものを、植え付けていたはずです。 現代では、そういう慣習も遠ざかって久しく、人の心にはもっと合理的で効率的な考え方が 行き渡っていると思われますが、目には見えないけれど、私たちを包み込んでいるものへの 配慮にも、また目を向けるべき時期に差し掛かっているように、私には感じられます。

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