2020年11月10日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1989では
日本美術の研究者でもある、皇族・彬子女王の雑誌「和楽」での連載「イノリノカタチ」から、
次のことばが取り上げられています。
お盆のころに、小さな虫が近くに寄ってき
て、「あ、戻ってきたんだね」と、その虫に亡
くなった人を重ねる人もいらっしゃいます。
私も子供の頃には、お盆には虫取りなどの殺生をしてはいけないと大人に言われて、なるほど
と納得しながら、自重したことを覚えています。
それはお盆に亡くなった人が帰って来るから、殺生をしてはいけなかったのか、あるいは、
お盆には全てのものの命を大切にしなければならないから、虫でさえ殺してはいけなかったの
か、今ではその理由も定かではありませんが、ただそれが自明のことであるという共通認識が
一般に共有されていたように思います。
そういう共通した認識は、知らず知らずのうちに子供の心にも刷り込まれ、日ごろは表面には
現れなくとも、命や自然に対する漠然とした畏怖のようなものを、植え付けていたはずです。
現代では、そういう慣習も遠ざかって久しく、人の心にはもっと合理的で効率的な考え方が
行き渡っていると思われますが、目には見えないけれど、私たちを包み込んでいるものへの
配慮にも、また目を向けるべき時期に差し掛かっているように、私には感じられます。
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