2020年10月27日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1976では
作家森まゆみの『手に職』から、東京・神田のとび職の頭西出幸二の次のことばが取り上げ
られています。
惚(ほ)れると惚(ぼ)けるはおんなし字だよ。
森が西出から、高所で命綱もつけずに飛び回る話を聞き、思わず「カッコイイ、惚れちゃう
なあ」と声を上げると、間髪おかず返されたことばだそうです。
江戸の流れをくむ職人のいなせさを体現するようなことばですが、ちょっぴり含羞も含まれ
ているように感じます。
でも、鷲田のコメントでも語られているように、惚れてもおぼれず、ちょっとすかして冷静
にことに当たることは、生きて行く上での極意の一つかも知れません。
私たちは、ことが上手く運ぶとつい調子に乗ったり、人の言うことを吟味しないで信じ込ん
でしまったり、目の前の事実を当たり前のことと思い込んでしまったり、ついついしがち
です。
でも、そこで待てよと冷静になり、慎重になれたなら、随分失敗や思い違いも少なくなるの
ではないでしょうか?
私も今までの経験から、そうあるべきと自らを戒めているつもりですが、でも石橋を叩いて
渡るだけでは何か物足りないなあ、とも感じます。要は見極めと配分の問題なのでしょうが、
やはり世渡りは難しいものですね。
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