2020年11月17日火曜日
マルクス・ガブリエル著「新実存主義」を読んで
書名に惹かれて、手に取りました。しかし哲学に疎い私が、どれだけ内容を理解出来たか分かりません。
それで以下、本書を読んで私なりに感じたことを記してみたいと思います。
まず、著者が新実存主義の哲学を展開するに当たり、立脚した実存主義の考え方は、以下の2点です。
①人間は、本質なき存在であるという主張②人間とは、自己理解に照らして自らの在り方を変えること
で、自己を決定するものであるという思想。
つまり、私の理解したところによると、現代における自然科学の飛躍的な発展によって、宇宙の起源、
脳を含む人体の構造の解明が格段に進み、私たち人間の間では、将来的に自然界の全ての謎が明らかに
なるという気分が、漂っているように感じられる。それに伴って科学の分野でも、人間の心は脳の
物理的機能と構造だけによって形成され、働きを規定されるという考え方が支配的になって来ている。
それが恐らく、哲学における自然科学と呼ばれるのだと思われます。
しかし現実には、宇宙にしても人間の脳にしても、我々がその謎の解明に至った部分は、その広大で
深遠な領域のほんの一部に過ぎず、人間の知力で全容を把握することは到底不可能であり、それと同様
人間の心も、単に脳の機能だけによって生起するものではなく、人類の歩んで来た社会的生活や出来事
の中で、相互の交流ややり取りによって獲得され、あるいは、自己の認識や内省を通しても形成される
ものである。そしてその考え方に立つのが、新実存主義であるということです。
もしこの理解が正しければ、私が現実の生活の中で昨今感じるところでも、現在の風潮では、上記医学
も含む自然科学の目覚ましい発展や、情報化社会の進展によって、私たちのものの考え方においても、
身体的な感覚がますます薄れ、代わりに頭脳の働きのみに頼る、仮想的な思考が広がって来ているよう
に感じられます。
翻って、今回の新型ウイルス感染症の蔓延と国際的な社会機能の停滞は、人間が生身の肉体を持つ存在
であることを、改めて気づかせました。
新実存主義の考え方は、新たな覚醒を強いるコロナ後の世界に、一石を投じるものであると、私には
感じられました。
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