2020年6月4日木曜日

鷲田清一「折々のことば」1814を読んで

2020年5月13日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」1814では
自身も血管奇形という難病を患い、同病の難病指定と患者の相互支援のために活動
して来た、特定非営利活動法人代表・有富健の『負けるものか!』(真里鈴構成・編集)
から、次のことばが取り上げられています。

   喜怒哀楽のうち、怒りと哀しみは積もるもの
   であり、喜びと楽しみは積もらない。

難病を抱える発言者のことばとして、この言葉の重みは、私などにはとても簡単に推し
量れないとしても、上記の言葉を目にした時、私は、このコロナ禍の状況の中で、何か
勇気を与えられるような、感覚に囚われました。

というのは、この言葉は一見すると、「怒りと哀しみは積もる」という深刻な事実を突き
つけるように見えて、逆に「喜びと楽しみは積もらない」という後半の部分に、逆説的
な能動性、希望をはらんでいるように、私には感じられたからです。

つまり、「喜びと楽しみは積もらない」ものだから、私たちは常に「喜びと楽しみ」を生み
出し、見つけ出す努力をしなければならない。そしてその積極的な論法から言うと、
放っておいても「怒りと哀しみは積もる」ものだから、それを前提として、打ち勝つことを
目指さなければならない、というふうに。

このように、同じ言葉でも捉え方によって、全く逆の意味を帯びる場合があり、その言葉
を私たちがどのように受け止めるかは、発言者や受け手の心の在り方や、その時々の
状況に左右されると思いますが、今まさに困難な状況の中でこの言葉は、岩の裂け目
に染み入るように、愁いを帯びた私の心に届けられるように、感じました。

言葉というものの持つ力を、まざまざと感じさせられる思いがしました。

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