2014年12月17日水曜日

京都市美術「ボストン美術館 華麗なるジャポニズム展」を観て

この秋京都では、19世紀後半から20世紀初頭にかけて西洋の
美意識を揺り動かした、「ジャポニズム」に焦点を合わせた展覧会が
二つ開催されました。先ごろ観た「ホイッスラー展」と本展です。

「ジャポニズム」というと、私たち本家本元の日本人にとっては従来、
いわゆる異国人による自分たちの文化の評価ということで、表面的な
捉え方、分かり切ったことを今更と感じて、軽視するきらいがありました。

しかし当時の西洋美術をより深く味わうためには、その影響関係を
理解することが不可欠でしょう。さしずめ我が国で「ジャポニズム」を
主題とした展覧会が開催され、話題を集めたということは、私たちの
西洋美術を鑑賞する目が成熟を迎えて来ている、と捉えてもいいのでは
ないでしょうか。

さて本展は、五つのパートに分けて展観されます。

冒頭の(1)日本趣味 では、まず西洋人が日本美術に初めて触れた
驚きが再現されます。賞賛を形に表わすべく、初期の「ジャポニズム」は
模倣として登場します。

(2)女性 では、浮世絵に描かれる着飾った遊女の華やかさ、女性同志、
母子の打ち解けた親密な様子の描写が、日本女性を理想的なものとして
受け止めさせたといいます。洋の東西を問わず、人間は自らの身近に
ないものに憧れを抱く傾向があるのでしょう。

本展の目玉、モネの「ラ・ジャポネーズ」は大画面と色彩の迫力、着物の
刺繍の盛り上がりを絵筆で表現する巧みさで、私に従来のイメージとは
違うモネを感じさせてくれました。

(3)シティー・ライフ は、錦絵に見える風俗表現の西洋絵画への影響、
逆に西洋風俗の錦絵への反映を見せ、(4)自然 では、日本美術の
工芸意匠の西洋美術への影響を見ます。

(5)風景 において、浮世絵の風景画に表現された斬新な構図が、西洋の
画家たちに与えた影響を見せるのですが、ここに至り「ジャポニズム」は
それぞれの画家の血肉となるまで深化して、日本美術に
インスピレーションを得た新たな西洋独自の表現法として、確立された
のだと感じられました。

文化の融合について、私たちに深く考えさせてくれる展覧会でした。

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