2014年6月5日木曜日

”さし”が決まる

私たち和装の白生地を商うものは、一般的に鯨尺単位の物差を
使います。

写真は右が1メーターざし、左が鯨二尺ざしです。1尺は約38cmで、
10尺が1丈となります。

現代に生きる我々は、小さい時からメーター表記に慣れていて、
尺という単位の長さはすぐにはピンときませんが、和装の世界では
着物の表に必要な生地の長さが約30尺で、その長さの反物が
三丈ものと呼ばれ、表に八掛を足した長さが約40尺で、その反物が
四丈ものと呼ばれるというように、尺という単位が呉服に密接に
結びついているので、その単位の感覚を体得することが、どうしても
必要になります。

さて私たちは、二尺ざしの端を利き手の指にはさんで、生地の耳に
沿わせながら繰り返し手繰って、生地の長さを測ります。

ところが、物差の扱いに慣れるまでは、あるいは、扱いにある程度の
慣れを感じるようになっても、その時の状況や気分の違いによって、
測る度に長さが変わってくることが、往々にあります。

例えば、急いでいるときには、さしが堅かったり(実際の長さより
長い目の値が出る)、気分が散漫な時には、さしが甘かったり
(実際の長さより短い目の値が出る)するのです。

実際には、生地を切り売りする場合、お客さまが必要とする長さより
短くなってしまうといけないので、私たちは少し甘い目に測ることを
心がけます。

しかし基本的なこととして、いつでもさしの運びが出来るだけ一定に
なって、なおかつ自分の測り方のくせを把握することが必要です。

そのような状態になることを、”さしが決まる”と言います。

さしの扱いと同時に、仕事を身体化することを意味するのです。

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