2021年12月29日水曜日
「鷲田清一折々のことば」2221を読んで
2021年12月2日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」では
朝日新聞デジタル(10月21日配信)でのインタビューから、俳優手塚理美の次のことばが
取り上げられています。
ビタミンカラー色の器にひかれて購入し、そ
の器を食卓にのせたとき、「あっ、生きてる
な」と思ったんです。
この俳優は、歳が行くにつれて髪の毛の色を自然な色に戻し、物を減らすことにも取り組み
ながら、ふと鮮やかな色調の器に触れ、「物をいとおしむ空間」まで閉じてはだめだと悟っ
たそうです。
私も、こういう感じ方は大切だと思います。高齢に差し掛かるにつけ、着飾らず自然さを
求め、また、物を必要以上にため込まないようにする。これはこれで晩年の生き方として
必要な心構えだと感じます。
でも、そのように抑制的であるだけではなく、やはり、その中にも心の潤いや、晴れやかさ
を求めることは、生きて行く上で必要なのではないでしょうか?
私は、和装という伝統産業に従事する者として、工芸品などの手仕事の温もりを感じさせる
美しい物を、何か数点生活に潤いを与える物として使用、あるいは着用することが、この
ような観点からも好ましいと思います。
万事無機的な工業製品やIT機器、更には使い捨ての薄っぺらい日用品に取り囲まれている
生活の中で、たとえ数点でもこれらの愛すべき品物を人生の友とすることは、どれほどの
心の潤いや、安らぎを与えてくれることでしょう。
私はそう信じて、これからもこのことを提唱して行きたいと考えています。
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