2020年12月14日月曜日

西川美和監督映画「ゆれる」レンタルDVDを観て

かねてから興味を持っていたこの映画を、ついに観ることができました。 二人の共通の幼馴染である、川端智恵子(真木よう子)のつり橋からの転落死を巡って、 弟早川猛(オダギリジョー)と兄早川稔(香川照之)の葛藤を描く物語です。 智恵子の死の真相に就ても、この映画では決定的な瞬間は描かれておらず、観客の見方、 捉え方に託しているところがあり、様々な解釈が可能ですが、私は、自分自身が家業を 継いだ長男であることもあって、ついつい稔に寄り添った見方をしてしまいました。 東京でカメラマンとして成功し、派手な生活をする猛と、田舎で家業のガソリンスタンド を継ぎ、父親と同居しながら地道な暮らしをする稔。智恵子を巡るさや当てが、彼女の 不慮の死という悲劇を生みますが、私にはその発端として、自分にとっては過去の女で ある智恵子と、稔と彼女が仲睦まじそうな様子に嫉妬して、強引に肉体関係を持った猛の 自分勝手な行為に、原因があると感じました。 稔は長男であるだけに、弟への嫉妬や劣等感を包み隠して、自らの役割を演じているとこ ろがありますが、智恵子に対しては純粋に愛情を抱いていたのではないでしょうか。その 想いが、つり橋の上で智恵子に拒絶された時の反応になったと思われます。 そのように考えて行くと、兄の智恵子殺しの疑惑を巡る裁判の証言台で、猛が稔が故意に 智恵子を橋から突き落とす様子を目撃したと証言したことは、自らの罪悪感から逃れる ための利己的な行為であったと、私は推測しました。 しかし一方稔にも、智恵子が転落する直接の原因を作ったという罪悪感があり、有罪が 確定しての服役は、彼の性格からして彼自身を救ったとも思われますし、他方彼の服役 を通して、猛に兄への愛情を呼び覚まさせたという点でも、意味のあるものであったと 感じました。 男兄弟の普遍的な葛藤、情愛を描く、印象深い映画でした。

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