2020年12月9日水曜日
藤井道人監督作品映画「新聞記者」レンタルDVDを観て
昨年公開されて話題を呼んだ、東京新聞所属の望月衣塑子原作の映画「新聞記者」を、ようやく
観ることが出来ました。
出演者のセリフも小声の暗いトーンで始まり、それは最後まで終始一貫していましたが、観る
ほどに作者が訴えたかったことが、ひしひしと身に染みて来る、印象深い映画でした。
また、この作品が扱うテーマ、政府が行う不正を官僚が隠蔽し、マスコミは権力の顔色を窺って
この不都合な事実を告発することに慎重になるということが、我が国で現実に行われている可能
性が高い事実を目の当たりにする昨今、この映画が訴えかけて来るものにはリアリティーがあり、
それだけにこの映画を観る者は、身につまされるやり場のない憤りを禁じ得ないと、感じました。
この国の近年の政治の動向を振り返ると、官僚の専横を排し政治家主導の政策を行わなければ
ならないということが一時やかましく宣伝され、事実安倍内閣の長期政権の中で、その方針は
徹底されたと感じられましたが、そうなるとなるで、官僚による政権への忖度が行われるという
弊害が露になった、と言えるでしょう。とかく人間というものは、組織の中で非合理な行動、不正
を行う誘惑に陥りやすいものだと、感じさせられます。
さてこの映画の魅力の大きな部分は、2人の主演俳優、政府の不正を敢然と告発する新聞記者役の
シム・ウンギョンと、本来その隠ぺいを担わされる立場の、内閣情報調査室のエリート官僚役の
松坂桃李の切実な掛け合いの描写によると、思われます。
シムは、たどたどしさも残るセリフ回しで、同じく新聞記者で政府の不正を告発しながら、逆に
陰謀により誤報を発したということで失脚した、父親の意志を継ぐために記者になった、外国育ち
の若い女性を全身で好演し、対する松阪は、政府を擁護する役回りでありながら、政府の不正の
隠蔽する立場に耐えられなくなった先輩官僚の自死を契機として、シム演じる新聞記者に不正の
証拠を提供するまでの苦悩を好演しています。
映画は、この新聞記者による政府の不正の告発が成功するか否か(失敗に終わることが暗示されて
いると思われる)ところで終わりますが、その訴えかけて来るものは深く、久々に骨太の社会派の
作品であると、感じました。
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