2017年10月29日日曜日

鷲田清一「折々のことば」911を読んで

2017年10月23日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」911では
京漬物の老舗「西利」の副会長平井達雄の、次のことばが取り上げられています。

 「もったいない」が「手間がかかっている」という価値に変わるんです。

「おこうこのぜいたく煮」は、通常そのままで食べる漬物の沢庵が残って干からびた
時に、煮干しと一緒に煮て食べる総菜ですが、沢庵本来の味に煮干しのだしがよく
染んで、ご飯のともとして味わい深いおかずです。

同様の一手間をかけたおかずに、小魚などを油で揚げて、たまねぎと唐辛子を
加えた合わせ酢に漬け込んだ料理、「南蛮漬け」がありますが、いずれも本来の
食べ方からは二重の手間をかけることによって、更に味わいを高める発想でしょう。

特に「おこうのぜいたく煮」は、残り物に手間をかけて美味しく食べる、もったいない
の精神と、生活の知恵が融合した優れた総菜と言えるでしょう。

ところで私は、今回の「折々のことば」を読んで、二つのかっこ付きのことばを逆転
させた、「手間がかかっている」から「もったいない」と分かる、というフレーズを思い
浮かべました。

その意味は、人の手間がかかっている工芸品などを日用品として使用するように
すると、私たちの心の中にももったいないという意識が生まれて来るのではないか、
ということです。

例えば私たちは、日常の品を使い捨てという感覚で粗末に扱い勝ちですが、それが
手間のかかった品であったら、もう少し大切にするだろう、ということです。

勿論何もかもそんな品で揃えたら、経済的にも大きな負担ですし、現代の感覚では
不合理な点も多々あるでしょう。

でも、限られた地球という環境の中の資源の枯渇が言われる今日、何か一品でも
「もったいない」という感覚を思い起こさせてくれる日用品を手元に置いて使用する
ことは、意味があるのではないでしょうか?

0 件のコメント:

コメントを投稿