2017年10月9日月曜日

京都高島屋7階グランドホール「加山又造展 生命の煌めき」を観て

版画作品でも秀作を残した日本画家加山又造は、私にとって気になる存在でした
が、日本画の作品は創画会展等で数回目にしただけでした。京都高島屋でまとまった
作品を集めた展覧会が開かれるということで、足を運びました。

まず興味深かったのは初期の作品で、動物、鳥を題材に、未来派、シュールレアリスム、
キュビスムなど、西洋の美術思潮を大胆に取り入れて、独創的な日本画を制作して
いることです。

勿論日本の若い画家が、西洋の美術運動の影響を受けることはまま見られることで、
決して特別なことではありませんが、加山の場合それが単なる模倣ではなく、血肉と
なって彼の以降の絵画の中に消化されていると感じさせるのが、とても斬新でした。

その後彼の作品は琳派、水墨画などの影響を受けて、日本の伝統的な絵画様式を
見直す方向に回帰して行きますが、その根本には若い頃に培った西洋の前衛的な
美術を通した対象の捉え方があると、感じました。

その彼の傾向が顕著に現れる例として、私は日本画にしては硬質で、鋭い独特の
線が挙げられると思います。これは分かりやすい例では裸婦に見られるもので、また
冬の木立の表現などにも用いられ、彼の絵画の魅力を決定づけるほどに、重要な
ものだと感じさせます。

つまり、従来の日本画のたおやかな線ではなく、シーレやビュッフェに見られるような
対象を切り取るような鋭い線とでも言いましょうか、そのような線を用いることによって、
加山は自身の日本画の中に、現代的な洗練と洒脱を生起させることに成功したと、
感じました。

もう一つ印象に残ったのは、私の仕事にも通じる着物の作品で、彼の父親は京都の
着物の図案家であったということで、彼も着物に強い思い入れを持っていて、自ら
実際に制作したということです。

その着物の作品は、生地に直接波や鶴、牡丹の花などが素描で描かれていて、
私などにはかえってその並外れた筆力が、ダイレクトに伝わって来るように感じ
られました。このモダンな装いを持つ日本画家も、伝統工芸の血を確かに受け継いで
いるのです。

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