2022年3月5日土曜日

「鷲田清一折々のことば」2282を読んで

2022年2月3日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」2282では 前衛美術家で、かの太陽の塔の制作者、岡本太郎の『太郎に訊け!岡本太郎流爆発人生相談』 から、次のことばが取り上げられています。    人間はその数だけ、それぞれ、その姿のまま    誇らしくなければならないんだ。 私は彼の太陽の塔が好きで、彼こそは他の日本人には見られない、スケールの大きな芸術家で あると思っています。この言葉は、いかにも彼らしい言葉。彼の芸術の根本を貫く言葉(思想) だと感じます。 そして元来人間はそうあるべきであり、そうあることを理想とすべきであると思います。しかる に私たちは、どんどん各個人を差異化し、優劣の序列をつけて差別化して来たと感じます。 なるほど人間には競争心があって、互いが競うことによって、それぞれのスキルが向上して来た 側面があります。でもそれは、それぞれの分野や狭い部分でのことであるべきで、そのことに よってその人間の全体が評価されるべきではないですし、そのことによって人の優劣が決められ るべきではないと思います。 しかるに現代では、社会的地位や富裕の度合い、所属企業、出身大学、学業成績など、外面的な 評価基準で人の優劣を決めるということが、益々当たり前になっているように感じます。 そのようにして人物を評定すれば分かりやすいし、手っ取り早いということでしょう。でも、 人間の価値はそれだけで決められるものではない。その基準からは外れたところに、美点を有し ている人は、いくらでもいます。 増してや人間は、それぞれの固有の資質の中に他より優れたものを有しているはずで、周囲から もそれが認められ、本人もそのことを自覚して、自分を誇らしく思えることが、理想であると 思います。 現実にはなかなか難しいことですが、少なくとも、岡本太郎の芸術がその理想を指示してくれる ことこそ、掛け替えのないことだと感じます。

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