2022年3月12日土曜日

「隠岐さや香のまったりアカデミア 100年前はひと昔?」を読んで

2022年2月17日付け朝日新聞朝刊文化面、「隠岐さや香のまったりアカデミア」では、「100 年前はひと昔?」と題して、科学史家の筆者が、もし各国の政府が約100年前のスペイン風邪 の猛威を参考にして、今回のコロナ禍に対処することが出来たら、もっと被害を抑えることが 出来たかもしれない、と語っています。 それによると、先進国の政府は感染症の脅威が最早去ったかのように考え、医療を含めた公共 サービスのコスト削減に熱心であったために、コロナ禍での病院、保健所の対応が後手に回り、 研究者の側にも、基礎的な感染症研究を時代遅れのように捉える空気があり、市場のニーズに 合う応用研究に頭脳もカネも集まりがちであったために対策が遅れた、というのです。 確かに現代社会では、市場の要請という経済的な物差しが優先的に取り扱われ、その結果非常 に短い時間軸で物事が考えられて、長期的な視野が失われがちになるように感じられます。 例えば今回の事態の他にも、感染症研究だけではなく、様々な分野の学問研究において、目先 の研究成果や経済性が優先されるあまりに、基礎的な研究がおろそかにされて、その結果将来 的に重大な発見や革新的な発明が少なくなって、学問研究が先細りする恐れがあることが言わ れて来ました。 現代に生きる我々にとって、コスト優先ということは経済的な原則ではありますが、それだけ ではなく、短期的には無駄であるけれども、将来のために費やす努力、目先の損に目をつぶる ゆとり、というものが大切であることを、今回のコロナ禍は、我々に示してくれているのでは ないでしょうか。

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