2018年1月12日金曜日

MIHO MUSEUM「雪村ー奇想の誕生」展を観て

日本の優れた水墨画家では、その始祖とも言える雪舟、江戸時代に活躍した白隠の
作品には親しんでいますが、雪村は関東、東北を中心に活躍したこともあってか、
今までまとまった作品を観る機会がありませんでした。

また雪村が、今日一躍脚光を浴び私もその展覧会を好んで訪れる、伊藤若冲の絵画
の大きな特徴の一つである、奇想を我が国で初めて現した画家であるという触れ込み
も、私がこの雪村展に足を運ぶ切っ掛けとなりました。

さらには会場のMIHO MUSEUMも、今までに景観の素晴らしさをしばしば耳にして、
是非一度行ってみたいと思っていたので、この機会に尋ねることにしました。

新名神高速道路を信楽インターで降り、カーナビに従ってゴルフ場とも近接する曲がり
くねった山道を進むと、形の良い石畳の広場を備えたレセプション棟に到達します。

この施設で入場券を購入して、ここからはピストン輸送の電気自動車で美術館棟に
向かうか、徒歩で行くことになりますが、約8分の距離ということなので、私は歩くことに
しました。

綺麗に整備された坂道を進んで行くと、金色に輝くトンネルに入ります。落ち着いた
心地よさに包まれながらトンネルを抜けると、渓谷に掛かる橋を隔てて、木々の緑に
埋もれるように配置された美術館棟が姿を現しました。

建築設計はルーブル美術館のガラスのピラミッドなどで知られる、I.M.ペイによるもの
であると言います。美術館内からの周囲の山々の見晴らしも素晴らしく、正に別世界で
日常を離れて絵画を鑑賞する趣きがありました。

雪村の絵画を一通り観て、確かな筆力と力強さ、対照的な繊細な表現に魅了され
ましたが、私はやはり、奇想とも言える独特の描写に注目せざるを得ませんでした。

ここまで極端に誇張された一種ユーモラスでもある表現は、私の知る限り中国の
水墨画には見られないので、日本独自の表現法と思われますが、そのような描写の
モジュベーションとなるものは、我々日本人の多くが有し、なかなか表面には現れない
が心の奥深くに内在させている、激情の発露ではないかと思い至りました。

今回に展覧会でも、雪村の影響を受けた後世の画家たちの作品も合わせて展観され、
またここには展示されなくても若冲を初め、その薫陶を受けた画家はさらに多く存在
すると推察されるので、絵画における日本人のDNAの顕現ということについても楽しく
推理する、知的刺激に満ちた時間を持つことが出来ました。

                                         2017年8月6日記

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