2014年5月28日水曜日

ジャック・ケルアック著「オン・ザ・ロード」を読んで

アメリカ、ビート・ジェネレーションの代表的作家の一人、ケルアックの
伝説的ロード小説です。

出版当時、多くの若者に多大な影響を与えたそうですが、50年以上の
時を経ての映画化を機に、再び脚光を浴びているということで、手に
取りました。

ケルアックがこの小説を上梓した1950年代は、経済的には米国が
名実ともに世界一位の国として繁栄を極め、他方国際関係においては、
ソ連との、冷戦と呼ばれる一触即発の軍事的対立が深まって、
国内では物質的豊かさを謳歌しながらも、思想的にはアメリカ的価値観を
一方的に強制するような、閉塞感が充満していたといいます。

そこに反逆児としてのビート・ジェネレーションが登場する訳ですが、
本作品では、怒れる反逆の体現者、ディーン・モリアーティが何より
魅力的です。

その魅力の秘密を探ると、まず彼の驚異的なタフネス、時を惜しむ
ように不眠不休で、時速150km近いスピードで車を操り、
アメリカ大陸を縦横無尽に駆け巡ります。

彼は無軌道、破天荒、節操もないが女性にもてます。底抜けの
優しさを持ち、面倒見も良いからです。

浮浪者、黒人、ヒスパニックら虐げられた人々に共感を持ち、
彼らの産み出す芸術を好み、アメリカという豊かで権威主義的社会で、
その恩恵を逆手にとって、道徳に抗い、秩序をもてあそびます。

最後に残るのは、狂騒の宴の後の寂しさではありますが、彼の人生の
軌跡は、現代人が生きる方便として飼いならしてしまった野性を解き放ち、
青春の炎を最大限に燃焼させた潔いまでのすがすがしさを残します。

また本書を読んで、反逆するものが存在するということが、正に社会の
活力を示すのではないか、ということにも思い至りました。

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