2014年5月23日金曜日

映画「リトル・ダンサー」スティーブン・ダルドリー監督を観て

1980年代イギリス北部の炭鉱町、ボクシング教室に通う11歳の
ビリーは、たまたま同じ会場で隣り合わせて練習をすることになった、
ダンス教室のレッスンに魅了されます。

炭鉱労働者の次男で、兄も炭鉱で働いています。男は強く、
たくましいが気風の家庭にあって、彼はめめしい女の習い事と
見なされがちなダンスを習いたいとは、とても切り出せません。

しかしボクシングの練習をしていても、体は勝手にダンスのリズムに
合わせて動き出し、最早、彼の意思ではどうすることも出来ません。

この場面の描写が秀逸です!この映画はきっと、この部分を
表現するために作られたのだ、とさえ思わせます。

主演ビリー役のジェイミー・ベルは、北部なまりが話せて、ダンスに
優れる、2000人余りの中から選ばれたといいます。

キャスティングが見事で、炭坑町の素朴な少年が、止むに止まれぬ
衝動に駆られてダンスにのめりこんで行く姿を、違和感なく
演じ切っています。

人生の中で人には誰でも、ことの重大さ、些細さは別にしても、
何かに魅了され、突き動かされる瞬間が必ずあるはずです。

しかし、その多くの場面において私たちは、様々な事情や制約、
あるいは諦観によって、その衝動に身を任せることを断念するのでは
ないでしょうか。

そのような一瞬に立ちはだかる障害を乗り越えて、ためらわず前に
進む意志こそ、純粋さであり、情熱であり、時によっては才能である
のかもしれません。

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