2026年3月25日水曜日

辻田真佐憲著「「あの戦争」は何だったのか」を読んで

現在の政治状況や国際関係を見ても、「あの戦争」(日中戦争から第二次世界大戦に至る戦争)は、我が国 の内政、外交に今なお大きな影響を及ぼしていると思われます。それで大きな関心を持って、本書を手に取 りました。 本書を読んでまず新鮮な切り口と感じたのは、最初に「あの戦争」はいつ始まったのかということを、取り 上げていることです。私が「あの戦争」について考える時想定するのは、せいぜい満州国建国、日華事変 から太平洋戦争に至る戦争です。 しかし人によっては、米英との開戦以降を「あの戦争」(第二次世界大戦)と想起するかも知れません。 ですが、私がそのような捉え方もあるかと刮目させられたのは、本書の著者がペリー来航以降の日本開国に 至る事件を、「あの戦争」の始まりと考える見方もあると提起しているところです。 なるほど、事に成否はさておき、もしそもように考えるならば、日本の行った一連の戦争が、一方的な侵略 行為であるという想定は、揺るがせられます。なぜならあの当時、長年海外との交流を最小限に控えてきた 我が国に、米国は最新鋭の軍艦の威力を見せつけて、有無を言わせず開国を迫ったからです。もしこの事件 を「あの戦争」の始まりと考えるなら、日本は軍事的に近代化した欧米列強の脅威に突き動かされて、結果 として一連の侵略行為を遂行したことになります。 つまり、日本の戦争行為の犯罪性が、幾分薄められるという理屈です。ここまで読んで私は、その見方の 斬新さには一定の評価をしながらも、著者は我が国の戦争の正当化を目論んでいるのではないかと、一瞬 いぶかりました。しかし以降の章を読み進めると、論は日本の立場、侵略されたアジア諸国の立場、アジア における権益を巡って我が国と対立した欧米諸国の立場を、出来るだけ公正で、客観的な視点で考察し、「 あの戦争」の思想的、政治的偏向を伴わない姿を、浮かび上がらせようと努めています。 ここに至って、「あの戦争」の開始時期をペリー来航まで遡るべきことの可能性を巡る当初の提起は、歴史 を利害関係を超えた長く広い視野で見ることの必要性を、示していると気づかされます。 「あの戦争」に対する我が国の戦争責任の問題は、今なお根本的な命題としての議論の対象であり、国政を 左右する課題です。本書のようなこの問題に対する客観性を重視する捉え方は、日本の行く末を規定する ためにも、益々必要になってくるように思われます。

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