2022年3月26日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」2331では
詩人石垣りんの詩「花のことば」から、次のことばが取り上げられています。
昔々 立身出世という言葉がありました。
それはどういうことですか
意味はさっぱりわかりません
「咲いている花が 尚その上にお化粧することを考えた/そんな時代の言葉です。」と続き、
自分たちは「ひらく」ことで精一杯、また「散る」と詠じていのちを棄てる、そんな潔さ
とも無縁と更に続きます。
決して遠からぬ昔、命を棄てる潔さが賛美された時代があり、ついこの間までは、立身出世
が至上の価値であるように考えられた時があったと感じます。
前者は戦乱に明け暮れた時代で、後者は高度経済成長に沸き返った時と重なります。そこから
今は曲がりなりにも平和の中で成熟を迎えた時代、低成長の中で豊かさを見つめ直す時、なの
でしょう。
勿論これは今の時代を口当たり良く言った表現で、現実には少子高齢化、貧富の格差の拡大や
人間関係の希薄化による疎外感の増大という、大きな社会問題を抱えた時代状況ですが、でも
結局私たち一人一人の心の持ち方は、雑音や妄念を排し、自分自身が「ひらく」ことで精一杯
に生きることを目指すことではないか?
そう考えて、このことばに惹かれました。
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