2022年5月24日火曜日

「鷲田清一折々のことば」2331を読んで

2022年3月26日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」2331では 詩人石垣りんの詩「花のことば」から、次のことばが取り上げられています。    昔々 立身出世という言葉がありました。    それはどういうことですか    意味はさっぱりわかりません 「咲いている花が 尚その上にお化粧することを考えた/そんな時代の言葉です。」と続き、 自分たちは「ひらく」ことで精一杯、また「散る」と詠じていのちを棄てる、そんな潔さ とも無縁と更に続きます。 決して遠からぬ昔、命を棄てる潔さが賛美された時代があり、ついこの間までは、立身出世 が至上の価値であるように考えられた時があったと感じます。 前者は戦乱に明け暮れた時代で、後者は高度経済成長に沸き返った時と重なります。そこから 今は曲がりなりにも平和の中で成熟を迎えた時代、低成長の中で豊かさを見つめ直す時、なの でしょう。 勿論これは今の時代を口当たり良く言った表現で、現実には少子高齢化、貧富の格差の拡大や 人間関係の希薄化による疎外感の増大という、大きな社会問題を抱えた時代状況ですが、でも 結局私たち一人一人の心の持ち方は、雑音や妄念を排し、自分自身が「ひらく」ことで精一杯 に生きることを目指すことではないか? そう考えて、このことばに惹かれました。

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