2022年2月15日火曜日

レイチェル・カーソン著「沈黙の春」を読んで

化学薬品による、環境破壊を告発した伝説的名著です。いつかは読もうと思いながら、ようやく 読み終えました。 まず私にとって驚くべきは、1962年という早い時期に、本書が著されたことです。この時期は、 日本では高度経済成長のただ中で、東京オリンピックの2年前、当時小学生であった私の記憶 では、母の郷里の滋賀県の農村部で夏休みを過ごした時に、時間を指定して家屋内に留まるよう 有線放送のアナウンスがあり、窓ガラス越しに見ていると、周囲一体にヘリコプターによる農薬 散布が実施されて、飛んでいるトンボが酩酊状態で窓ガラスに激突する、忘れられない場面を 目撃しました。しかしその当時は無論、その事の重大さに全く、思い及びませんでした。 この頃のアメリカは、日本に比べて遥かに先進の地で、従って、化学薬品による汚染問題も懸念 されつつあったと想像されますが、未だ深刻な事態に至っているという一般の認識は乏しく、 それ故、カーソンの声高な告発は、重大であったと推測されます。今本書を読むと、その主張の 主意は至極もっともで、なぜ当時の人々は、その弊害に思い至らなかったのかと、歯がゆく感じ ます。 でもこれは、後世の人間の傲慢な感想というもので、人類は経験を積み、失敗を繰り返して知識 を蓄積し、事態を改善して行ったと言えます。しかし、化学薬品による環境破壊は、出来るだけ 速やかに解消されるべき重要な問題で、それだけにカーソンの告発には、大きな価値があるの です。 人間が危険な化学薬品を積極的に使用する要因として、カーソンは2つのことを挙げています。 1つは、皮肉なことに、皆がもっと良い、楽な生活を求めるため、もう1つは、私たちの経済の 一部、並びに生活様式が、このような恐ろしい薬品の製造や販売を要求するためです。この適確 な指摘は、人間の業、並びに資本主義的生産様式の弊害をあぶり出します。 また、昆虫防除に化学薬品を使い出してから、人間が見落としている2つの重大なこととして、 1つは、自然そのものの行うコントロールこそ、害虫駆除に本当の効果があること、もう1つは、 ひとたび環境抵抗が弱まると、ある種の昆虫は、爆発的な増殖を示すことを挙げています。 この指摘などは、現在地球の環境保全のために提唱されている、SDGSのスローガンともつながる ものです。正に、時代を経ても、色あせない名著です。

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