春のこの時期、京都市美術館で好一対の美術展が開催されています。モネ展と
ルノワール展です。周知のように2人は印象派の代表的な画家として、我が国でも
人気があります。
私はもち論両方観るつもりで、しかし一日で観るのは少々きついと考えて、まず
モネ展、それから日を隔てた休日にルノワール展を訪れました。
本展はルノワール特有の透き通った女性の肌、健康的な唇と頬の輝きに焦点を
当てた、60点ほどの作品で構成される展覧会で、モネ展と比較するとこじんまり
していますが、彼の絵画の特色がよく示された、好ましい展観となっています。
今回の両展を比べると、同じ印象派の旗手の共通点と違いが見えて来るように
感じます。おおざっぱに分けると、光への共通の関心と興味を持つ絵の対象の
違い、と言えましょうか。
絵画の対象の違いは、モネが終生風景画に打ち込み、ルノワールが一貫して
女性像を描き続けたことからも明らかです。両展を観ても、モネが晩年には
自ら好みの庭園を造り上げてその情景を描くという、風景画への徹底した
こだわりと、対してルノワールの繰り返される飽くなき女性美の探求に、各々
画家の情熱と執念を看取らされます。
共通点について見てみると、光り輝く対象の表現に興味を持った二人が、特に
初期の印象派展の頃には、文字通り描く対象は違えど、光に満たされた画面を
現出させる喜びに打ち震えるように、競って華麗な色彩に溢れた絵画を描き、
それから次第に、光によって演出される対象の量感や光の移ろい、揺らぎに
関心が移って行ったことが了解出来ます。
さてこのルノワール展の出品作で、私は同じ人物像でも作品に二つの傾向が
あることに気づきました。一つは、一人の子供、女性の愛らしさ、美しさを描く絵、
もう一つは、複数の人物を配して、場の雰囲気の好ましさを描く絵画です。
私には特に今展では、後者の場の雰囲気を描く作品に、印象に残るものが
多くありました。殊に日本初公開の「昼食後」は、若い女性の夢見るような
佇まいと、煙草に火を点けようとする男性の満ち足りた様子が、いかにも
輝かしく幸福な雰囲気を演出しています。観る者の心も思わず浮き立たせる、
好感の持てる作品でした。
4月10日記
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