2024年3月2日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」3015では
フランスの批評家ロラン・バルトの『記号の国』から、次の言葉が取り上げられています。
贈られる物は中味ではなく、その箱であ
るかのようだ。
この批評家は日本を訪れ、人々の贈答行為、とくにその包装に強い印象を受けたといいます。
木や紙の箱に入れられた贈答品は、のし紙をかけた上に、水引できれいな結び目を付けて結ばれ、
さらに美しく折り目を付けた包装紙で包まれて、相手に渡されます。
このような習慣のない欧米人には、時には、中味よりも包装装飾の方が立派に見えるかも知れま
せん。
でも日本人のこの習慣は、相手に贈る品に更に値打ちを付けるために、行われていると推察され
ます。
つまり贈答品に、相手への真心、敬意を加味することによって、よりこの行為のかけがえの無さ
を演出していると思われるのです。
物を贈るという行為にも、贈り主が満足することよりも、相手が喜ぶことを第一に考える。相手を
まず立てるという日本人の習慣は、良きにつけ悪しきにつけ、廃れて来ているように感じられます。
それは仕方の無いことかも知れませんが、私は少なくとも、真心を込めて贈られるにふさわしい
私の店の商品を、これからも提供して行きたいと考えています。
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