2023年5月3日水曜日

「鷲田清一折々のことば」2654を読んで

2023年2月23日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」2654では 社会哲学研究者・玉手慎一郎の論考「強い制度志向と倫理のアウトソーシング」(「現代思想」1月号) から、次のことばが取り上げられています。    倫理的な行動や態度を要求することなしに、    端的に望ましい帰結が生み出されるように制    度を設計しようという考え方が広がっている これも合理的で、早急に結果を求める最近の風潮の現れでしょうか?でも、このような形の制度設計が なされると、人が自らの倫理観に照らして、内省的な態度で行動を起こすという習慣が失われてしまい かねません。その結果余計に、他者を信じられない殺伐とした社会になって行くのではないでしょうか。 例えば分かりやすい例では、道路わきに設置してある農産物の即売所で、従来なら台に野菜が並べられ て、その傍らに設けてある料金箱に購入者が任意で代金を入れるようになっていたのに、最近では販売 機を設置して、料金を投入しなければ野菜が取り出せないシステムが増えてきているように感じます。 これは勿論、前述のようなシステムでは、料金を支払わずに品物を持ち帰る人が増えて来ているという 悲しい現実への対応策ということなのでしょうが、販売機システムが当たり前になると、益々人の倫理 観が衰えて行く様に感じます。 では多少の損をしても、人の善意に期待する制度を維持すべきだとは、とても無責任には言えませんが、 少なくとも、そのような美徳に期待するシステムを残せるような慣習を保つ努力は、続けて行くべきだ と思います。

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