2022年10月14日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」2526では
NHKテレビの番組「プロフェッショナル」(9月30日放送)から、”ホルモンの神様”とも呼ばれる
焼肉職人・豊島雅信の次のことばが取り上げられています。
俺も放られたもんだから、ホルモンみてえな
もんだって。
幼くして事故で右手の指を失った豊島は、希望の就職もできず、失意のうちに実家の焼肉店を手伝
う中で、ある日、肉の部位のうちで用なしとされるホルモンが、自らと同じ境遇に思え、仕込みに
必死の工夫を重ねて、全国から客が訪れる伝説の人気店を作り上げたといいます。
私もこの番組を観て、強い感銘を受けました。彼は仕込みに試行錯誤を重ね、ホルモン各部位の
最良の下処理方法を見出し、しかも手間を惜しまずその処理方法を継続することによって、いつも
最良の状態の肉を客に提供します。その結果客は、他店では味わえない美味しい焼肉を食べること
が出来て、大きな満足感を得るのです。
自らが天職と見定めた仕事に、体も厭わず、全生活をかけて取り組む豊島の姿に、本当の職人を見
る思いがしました。また彼は、毎日長時間のホルモン肉の下処理を行うだけではなく、店の便所
掃除も率先して行います。この行為は、来店してくれる客への感謝の現れとも感じました。
効率と合理性が優先される現代の社会で、仕事というものの原点を見る思いがしました。
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