2025年12月11日木曜日
小杉英了著「シュタイナー入門」を読んで
先日、志村ふくみ著「一色一生」を読んだ時に、志村氏がシュタイナーの人智学に深い影響を受けている
ことを知ったので、以前に購入してまだ読んでいなかった、この本を急に読みたくなりました。私は恐ら
く、子供の教育という観点から、モンテッソーリ、シュタイナー教育に関心を持ってこの本を手に入れた
のですが、その後すっかり忘れていました。
そういうわけで、私にはシュタイナーの人智学について何の予備知識もありません。そういう丸腰の状態
の人間が本書を読んで、正直彼が如何なる人物で、彼の思想がどんなものであったのか、はっきりとした
答えを見出すことは出来なかったと感じます。なぜなら彼の訴えた中心的な部分に、霊的(オカルティック)
なものの探求があったからです。
高度に資本主義化された現代の日本社会に生きる私にとって、科学的合理性や物質主義が当たり前の価値観
として定着している中で、スピリチャルなものを重視する考え方は、漠然として捉えにくく感じられます。
そのような戸惑いを終始拭えませんでした。
しかし著者は、読者のこのような感じ方を承知の上で本書の執筆を行っていて、シュタイナーがそのような
思想を形成する過程を、出来るだけ分かりやすくかみ砕いて記述するように試みています。曰く、西洋思想
の根幹をなす正統なキリスト教の教義が、それ以前の宗教、自然観、呪術など霊的なものの影響関係を異端
として淘汰することによって成り立っていて、それ故、西洋近代文明を形作る思想には霊的な側面が著しく
欠如し、その復興が必要であると彼が考えるようになったというものです。
彼はその信念に基づき人智学協会を立ち上げます。そして、近代ヨーロッパに広く普及する国民国家のイデ
オロギーとは異なる、「精神における自由」「経済における友愛」「法政治における平等」の三文節化構想
を提唱するのです。現代の価値観に囚われている私には、矢張りシュタイナーの思想のオカルティックな
部分がネックとなりました。
しかし私たち日本人は、明治期以降に西洋の近代思想が導入される以前には、霊的なものに親和的な心情を
抱いていたはずですし、キリスト教的価値観を基盤とする現代の科学技術の発達や、高度資本主義化が、
地球環境に著しい悪影響を及ぼしつつあることが明らかになって来ていることからも、人間に内在する霊的
なものには、もっと目を向けられるべきかも知れません。
最後に、本書に触れられている第一次世界大戦勃発の要因としての陰謀論にしても、現代のそれとの関係に
ついても、考えさせられるところがありました。
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