毎年、日本伝統工芸展は楽しみに拝見していますが、今回特に感じるところがあったので、このブログで
取り上げてみました。いつものように、私が興味を持っている染織部門につて、感想を書いてみます。
今回特に感じたのは、全体のイメージとして、ほとんどの作品が極力無駄をそぎ落とした洗練やモダンさ、
つまり引き算的な美学に傾いている傾向があると、思われたことです。
勿論、織物の作品は、制作上の制約によって、幾何学的な模様表現になり勝ちであるのは、致し方ない
ことです。それでも配色や、手織り的な味を強調するような、素朴な表現も可能だとは思われます。
また友禅染の作品では、細かく鋭い糸目の線が強調されて、技巧としての巧みさや、労力をふんだんに
掛けていることは十分に伝わってきますが、作品の柔らかさ、豊穣さという点では、何か物足りなく
感じられました。
長引く不況、生活習慣の変化によって、伝統工芸品に対する一般の人々の見る目が厳しくなっている現在、
そのような環境での物作りは、大変な困難を伴うものだと、私のような和装業界の片隅で活動するものに
も、ひしひしと感じられます。
でもそんな時代だからこそ、手工芸品を制作する喜びや、手仕事ならではの素朴さ、些事に囚われない
おおらかさが、それを手にして、愛用する人に、十分に伝わる作品があってもいいのではないでしょうか?
生意気にも、そんなことを感じたので、記してみました。
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