2024年10月17日木曜日

京都高島屋グランドホール「第71回日本伝統工芸展京都展」を観て

毎年、日本伝統工芸展は楽しみに拝見していますが、今回特に感じるところがあったので、このブログで 取り上げてみました。いつものように、私が興味を持っている染織部門につて、感想を書いてみます。 今回特に感じたのは、全体のイメージとして、ほとんどの作品が極力無駄をそぎ落とした洗練やモダンさ、 つまり引き算的な美学に傾いている傾向があると、思われたことです。 勿論、織物の作品は、制作上の制約によって、幾何学的な模様表現になり勝ちであるのは、致し方ない ことです。それでも配色や、手織り的な味を強調するような、素朴な表現も可能だとは思われます。 また友禅染の作品では、細かく鋭い糸目の線が強調されて、技巧としての巧みさや、労力をふんだんに 掛けていることは十分に伝わってきますが、作品の柔らかさ、豊穣さという点では、何か物足りなく 感じられました。 長引く不況、生活習慣の変化によって、伝統工芸品に対する一般の人々の見る目が厳しくなっている現在、 そのような環境での物作りは、大変な困難を伴うものだと、私のような和装業界の片隅で活動するものに も、ひしひしと感じられます。 でもそんな時代だからこそ、手工芸品を制作する喜びや、手仕事ならではの素朴さ、些事に囚われない おおらかさが、それを手にして、愛用する人に、十分に伝わる作品があってもいいのではないでしょうか? 生意気にも、そんなことを感じたので、記してみました。

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