2023年11月9日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」2906では
作家サン=テグジュペリの『人間の土地』から、次の言葉が取り上げられています。
郷愁、それは知られざるものへの憧れだ
『星の王子さま』の作者らしい、何とスケールが大きく、詩的な解釈でしょう!
私たちなら通常「郷愁」は、郷土のような自らの原体験に基づく事象に対して抱く、甘酸っぱい
感情ということになります。
ところがテグジュペリは、自身の幼少体験を突き抜けて、もっと根源に遡って、「郷愁」を定義
しているのです。
このような解釈によるとこの言葉は、人間のあるべき姿を映し出す、鏡のような役割を果たすと
思われます。
その鏡に照らして、果たして自分は誰にも恥じない行為を行うことが出来ているのか?
彼自身が、戦時に勇敢な偵察飛行の任務に就いて、消息を絶ったと言われています。「郷愁」に
対するこのような捉え方は、彼の矜持であったのでしょう。
ヨーロッパ、中東で新たな戦端が開かれた現在、私たち東アジアに住む人間も、グローバル化の
進展を鑑みても、決してよそ事として座視することは出来ないでしょう。
私たち一人一人が、この作家のように、人類の未来に思いを馳せることも、必要であるように
思われます。
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