2023年8月27日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一 折々のことば」2833では
19世紀ドイツの哲学者・ニーチェの『人間的、あまりに人間的Ⅱ』から、次の言葉が取り上げられて
います。
所有が所有する。
所有は、個人の自由と独立を下支えするが、ある段階を越えると反転し、所有自体が目的と化して
人を支配しだす、ということだそうです。
確かに人は、生きて行く上で最低限のものは所有していなければならないでしょう。でも文明化して
行く過程で、その最低限のものは増えていったはずです。だから今日では、その最低限の所有物も
かなり膨らんでいるのは間違いありません。
でも、その所有を増大させる欲求にはきりがない。これを持てば次が求められ、そこに至れば更に
次のものを欲してしまう。人間とはそのように出来ていて、それが高度な文明を築く前提にもなった
はずです。
だけどそのような恒常的な欲求を持っている故に、その欲望が増大しすぎると、人はそのために縛ら
れ、身動きがとれなくなるのでしょう。
それ故自分の欲望から離れ、客観的な目で自分を見つめ直すことも必要なのでしょう。無欲の精神、
無一物、無縁の思想の大切さは、そのようなところにあると思われます。
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