恒例の秋の「非公開文化財特別公開」で、京都ハリストス正教会の大聖堂を見学
して来ました。
この教会は私の住む中京区にあり、外見は見慣れた建造物なのですが、初めて
中に入って聖堂内を目にすると、その端正で華麗な姿に思わず息を飲みました。
いつも通りかかる、特徴的ではあっても身近な建物の中に、このような素晴らしい
文化財がひっそりと存在することに、住み慣れていながら見過ごしている、この
都市の奥深さを感じました。
聖堂内正面の大小30面のイコンを壁のように装飾的に配置して飾った、イコノスタス
(聖障)はロシアから移送されたもので、ロシア本国にもあまり残っていない貴重な
文物だそうですが、その際損傷した部分は、日本人初のイコン画家山下りんによって
修復されたということです。また山下自身が描いた、余白の多い抒情的で端麗な
イコンも、聖堂内に展示されていました。
初めて実見するこの聖堂のイコンは、係員に尋ねると金属板の上に描かれていると
いうことで、それ故か一見平板に見えながら重厚な存在感と輝きを放ち、独特の
聖性を帯びた魅力を発散しています。長い時間説明を聴きながら見入っていました。
また木造の外装の白塗りのシンプルな佇まいと、内部のイコノスタスの優美、壮麗さ
のコントラストが、一歩入ると神聖な異世界に誘われるような、実生活ではなかなか
体験することのない白日夢のような感覚をもたらし、しばしその陶酔感に包まれ
ました。
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