2025年2月19日水曜日

「鷲田清一折々のことば」3106を読んで

2024年6月4日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」3106では この年にノーベル文学賞を受賞することになる、韓国の作家ハン・ガンへの、朝日新聞(5月28日朝刊)の インタビュー「暴力に満ちた世界 光は」から、次の言葉が取り上げられています。    ぎりぎりの、か細い希望の方が本物だと    感じる。 ハン・ガンは、「少年が来る」で光州事件の悲惨な状況を、それでも詩情を失うことなく描いています。 私はこの言葉を読んで、その描写方法を思い出しました。 事件が生々しく、陰惨であればあるほど、その現実を冷徹に眺めながらも、それでも未来への一縷の希望を 失わない。それだからこそ、美しい言葉を紡ぐことが出来るのだと感じます。 残酷であればあるほど、その事実を乱暴に叫ぶように描くのではなく、それを一旦深い悲しみと共に心に 受け止めて、なおやむことの無い思いを振り絞るように、それでいて切々と美しい文章で伝える。 その文体が、彼女の切ない希望を、読者に送り届けているのではないでしょうか?この時代に読むげき作家 だと思います。

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