2024年6月4日付け朝日新聞朝刊、「鷲田清一折々のことば」3106では
この年にノーベル文学賞を受賞することになる、韓国の作家ハン・ガンへの、朝日新聞(5月28日朝刊)の
インタビュー「暴力に満ちた世界 光は」から、次の言葉が取り上げられています。
ぎりぎりの、か細い希望の方が本物だと
感じる。
ハン・ガンは、「少年が来る」で光州事件の悲惨な状況を、それでも詩情を失うことなく描いています。
私はこの言葉を読んで、その描写方法を思い出しました。
事件が生々しく、陰惨であればあるほど、その現実を冷徹に眺めながらも、それでも未来への一縷の希望を
失わない。それだからこそ、美しい言葉を紡ぐことが出来るのだと感じます。
残酷であればあるほど、その事実を乱暴に叫ぶように描くのではなく、それを一旦深い悲しみと共に心に
受け止めて、なおやむことの無い思いを振り絞るように、それでいて切々と美しい文章で伝える。
その文体が、彼女の切ない希望を、読者に送り届けているのではないでしょうか?この時代に読むげき作家
だと思います。
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