2016年6月17日付け朝日新聞朝刊、夏目漱石「吾輩は猫である」連載49には、
自分の娘を寒月に嫁がせるべきかどうか探るために、彼と親しい苦沙弥
先生宅を突然訪れた金田夫人と、苦沙弥、迷亭の滑稽なやり取りの内、
夫人の曲がりなりにも高尚な質問が、次第に下世話になって行く様子を
活写する、次の記述があります。
「「寒月さんも理学士だそうですが、全体どんな事を専門にしているので御座い
ます」
「御話は違いますがーこの御正月に椎茸を食べて前歯を二枚折ったそうじゃ
御座いませんか」
「何か御宅に手紙かなんぞ当人の書いたものでも御座いますならちょっと
拝見したいもんで御座いますが」」
それにしても厚かましい夫人です。相手の都合も考えないで突然やって来て、
ずけずけとフィアンセ候補の人となりを確かめにかかる。当時の所謂成金を
冷笑的に描いたキャラクターでしょうか?
しかし、苦沙弥、迷亭も負けてはいない。相手の無学を逆手にとって、夫人の
気炎を見事に殺いでみせます。
すると質問は次第に下世話な方に流されて、迷亭の独壇場の滑稽話に落ちて
行きます。
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