2016年2月16日付け朝日新聞朝刊、鷲田清一「折々のことば」312に
新約聖書の使徒行伝の中から引いた、次のことばが取り上げられています。
目から鱗が落ちる
よく知られた聖書の中の言葉です。一般に目から鱗の体験というと、
すがすがしい気分にさせてくれるものもありますが、ドキッとさせられることも
あります。前者は、その体験によって新しいことを知ることが出来た喜びであり、
一方後者は、間違った知識が正された時に感じるものです。
誤った知識が正されるにしても、まったく個人的に持っていた自分の知識が
間違いであった時には、せいぜい自身が恥をかくぐらいで済みますが、もし
その見当違いの知識が私の先入観になっていて、自分がその知識に従って
ものを考えていたり、ましてや行動を起こしていたりした場合には、周囲の
人々に迷惑をかけることになります。
そのようなことにはならないように、得た知識を鵜呑みにしないことを心掛けて
いるつもりですが、日々振り返ってみると、ついつい思い込みの思考や行動に
駆られていることがあります。よく反省させられるところです。
さて生半可な知識や表面的な知識は、しばしば私たちの考えや行いを誤らせ
ますが、とは言え知識というものは、無論我々が客観的に考え、冷静に行動
するための大切な指針となります。要するに、今得た知識が正しいものかどうか
もう一度冷静に検討してから、自らの血肉とすべきなのでしょうが、何かと
気ぜわしい今日、なかなか難しいことです。
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