前回大きな反響を呼んだ謎の紛争地域、”アフリカの角”ソマリア潜入記第二弾
です。
すっかりソマリアに魅せられた冒険家高野秀行が、再び危険この上ない
その地域に赴きます。彼がこの地に惹きつけられるのは、ソマリ社会の
一筋縄ではいかない複雑さと多様性、彼を特別な客人として迎えてくれる
現地の人との濃厚な人間関係によると感じます。
今回高野が志すのは、現地と日本のつながりを模索することもありますが、
ソマリ人をその日常生活にまで踏み込み、より深く知るということ。彼は
そのためには「言語」「料理」「音楽」を理解することが必要と考え、まず
日本滞在の数少ないソマリ人兄妹から言語のトレーニングを受けた後、
ソマリランドでは早速、ソマリ世界で高名な詩人兼ミュージシャンに会いに
行きます。
その詩人との会話を通して、ソマリ音楽の原形が相聞の恋歌であることを知り、
次には現地の新婚家庭に初めて客人として招かれ、家人の心づくしの歓待を
受けて、一見荒っぽく、ぶっきらぼうなソマリ人の繊細で心優しい内面を知る
のです。
彼はイスラム教国では難しい一般家庭に入り込み、家庭料理を習うことにも
挑戦をして、ソマリ人が日常に食べる料理を知り、家庭内の女性の素朴さ、
純真さを知ります。
また私が感銘を受けた逸話は、父の仇に対して復讐をする代わりに、その娘を
嫁に迎えることによって周囲を納得させ、和解を成し遂げた長老の話で、ソマリの
かつての遊牧生活に基づく強固な氏族社会にあって、争いを解決するための
私憤を超えた知恵というものに、利己心に振り回され勝ちな現代社会に生きる
私たちが、考えさせられることがあると感じました。
とはいえ、南部ソマリアが戦乱の地であるというのは紛れも無い現実で、著者も
実際の戦闘に巻き込まれて、戦争の過酷を直に体験するのですが、いずれにせよ
目まぐるしく変化し、身の危険も付きまとうソマリ世界にあって、人びとが民族の
誇りを保持し、危機にあってもポジティブに、自分の問題は自身で解決しようとする
知恵とバイタリティーに、平和な世界に生きる私たちは、自己を振り返って学ぶべき
ところがあるのではないかと、感じました。
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