2014年3月26日水曜日

神戸市立博物館「ターナー展」を観て

英国を代表する風景画の巨匠ターナーの回顧展を観ました。

彼の風景画にとって、{崇高}というキーワードは欠かせないもののようで、
彼は観る者に対して、畏怖と尊敬の念を抱かせる絵画を描くことを、目標と
したといいます。

それゆえターナーの風景画、特に大画面の油彩画は、力動感、無辺性、
崇高な意志の表象において、他の追随を許さないスケールに仕上がって
います。

他方彼の水彩画は、繊細なタッチで無駄を排した簡潔な表現、鋭敏な
色彩感覚による絶妙の配色によって、確固とした存在感を有しながら、
軽やかで詩情溢れるものに仕上がっています。

この二面性も、ターナーの芸術の掛け替えのない魅力でしょう。

彼の風景画のもう一つの特色は、物語性です。この特性を持つことに
よって、その風景画はより奥行きと広がりを獲得し、{崇高}の志向も
相まって、他の画家の風景画と一線を画する、独自の魅力的な作品に
仕上がっています。

また晩年の作品は、油彩においても、水彩においても、最早造形に
重きは置かれず、色彩の配置と階調を用いて、もっぱら雰囲気と
情趣を描き出すことに、腐心しているように感じられます。

風景を描き続けて大成した画家も、晩年には無我の境地を目指した
のでしょうか。

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